卒業

 明日、6年生の長男が、卒業式を迎えようとしている。 結構、涙もろい私だけど、しっかりと見届けたいと思っている。入学式の分まで…
 6年前、入学を前に交通事故のため、式に出席できなかった悲しい思い出がある。
 アイスバーンでスリップした私の車は大切な我が子を一瞬にして傷付けてしまった。 幼い息子を、看病しながら、命の重さに胸が張り裂けそうな日々が続いた。 春の訪れと共に、息子の回復も順調で、もしかすると…、と希望も湧いてきた。 予定よりも早く、ギプスもとれた。何とか入学式に間に合うようにと、リハビリに励んでいた矢先の再骨折。それまでけなげにも涙を見せずに頑張って来た息子が始めて見せたあの時の涙を私は忘れない。
 しかし、1ヵ月遅れで杖を片手に小学生となった彼は持ち前の明るさと頑張りで怪我を跳ね返し、最後の運動会ではリレーのアンカーとして活躍するまでにたくましく成長してくれた。先日は、中学校の学生服を合わせたり、鞄、上靴、を用意しながら、最後の小学校生活を忙しくそして楽しく毎日学校へ向かう息子は、いつの間にか私を見下ろすくらい身も心も成長したように思う。(親ばかですね)
 そんな我が子を見る今、心から「ありがとう」と感謝したい。 あのとき、冷たいアスファルトの上で傷付いた私達に暖かい手を差し伸べて下さった全ての人と、一緒に心を痛めてくれた病院のI先生にも。  そして心からのお礼を言わせて下さい、「お陰様でこの子もこんなに立派に成長しました。」と…。


苫小牧民報 1996年(平成8年)3月16日(土曜日)掲載


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