雨のち晴れ

 新緑も目にしみる、五月晴れ…の書き出しの予定でした。ところが「いったいどうなっちゃったの?」と、思わず叫んでしまいたくなる、寒い毎日。おまけに雨が多いと来ている。
どんなに、文明が発達しても、天候あいてで、自然の恩恵から逃れられないのも農業の宿命。おっといけない、愚痴はこぼすまい。雨も自然の恵、寒い日もあってこそ、太陽のありがたさも感じられるのだから。
 一年前、田植えとともに始まったこのコラム。(農業)と最初に紹介された時、私は一瞬心のなかであとじさった。まだ(農家の主婦)だったなら、少しは気が楽だったでしょうに。なぜなら、かっこの中の二つの文字が私にはすこし荷が重いなぁと思えたから。この世界ではまだまだ駆け出しの私が口にするにはとてもおそれ多い。
 そんな訳で、季節をとおした花や作物の事、家族の話題、農作業の合間にふと感じたり、思いついたことなどを材料に、農業にだって、こんなに良い所が、素晴しい事だってたくさんあるんだよと、日々の暮らしの中での楽しい話、ほっとする様な話題などを意識して書いてきたつもりです。農業への我が内なるラブコール。そんな思いがうまく伝えられたらいいなぁと。
 私があえて書き得なかった農業の大切さ、大変さは、他人に訴えるものではなく、私達自信が真面目に向かい合って行く物だと思います。
 最後にコラム「ゆのみ」は、未知の世界へのチャレンジでした。物を書くなど縁の無かった私、締切に追われながらも、悪戦苦闘。でも今となっては一つ一つが、宝になりました。励ましをいただいた皆様と読者の皆様へ感謝しつつ、いつか、晴れる事を信じて。


苫小牧民報 1996年(平成8年)5月25日(土曜日)掲載


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